【プラ・ラーフ】タイの寺院にいる黒い神・ラーフ神を解説
「なんだこの金色の玉をくわえた生き物は!」
タイの寺院を巡っていると、時々真っ黒な顔をした少し不気味な神像を見かけることがあります。
丸いものを口にくわえていたり、巨大な顔だけが飾られていたり、日本人旅行者からすると「これは一体何の神様なんだろう?」と気になる存在です。
しかもなんだか憎めない顔をしている。。。
その神の名は「プラ・ラーフ(พระราหู / Phra Rahu)」。
タイでは非常に有名な存在であり、
- 厄除け
- 運勢改善
- 悪運払い
- 運気の転換
などの力を持つと信じられています。
見た目は少し怖いものの、タイでは“災いを防ぐ守護神”として広く信仰されています。
目次
プラ・ラーフ(พระราหู)とは?
プラ・ラーフは、インド神話由来の神「ラーフ」がタイへ伝わった存在です。
もともとはヒンドゥー教やインド占星術に登場する存在で、太陽や月を飲み込む“食(しょく)”を起こす神として知られています。
タイ語では「พระราหู(プラ・ラーフ)」と呼ばれ、
- 黒い神
- 闇の神
- 影の星
- 運命を揺るがす存在
として非常に強い力を持つ存在とされています。
タイでは占星術文化が非常に強く根付いており、プラ・ラーフは“運勢を左右する神”として特別視されています。
また、タイの宗教観は非常に独特で、
- 上座部仏教
- ヒンドゥー教
- 精霊信仰
- 占星術
- アニミズム
などが自然に融合しています。
そのため、仏教寺院の中にヒンドゥー由来の神像が祀られていることも珍しくありません。
エラワン廟のブラフマー神や、ワット・ケーク(ワット・スリ・マハー・マリアマン)のようなヒンドゥー寺院へ、多くのタイ人仏教徒が普通に参拝しているのもそのためです。
プラ・ラーフもまた、“外国の神”ではなく、タイ人の日常生活に深く溶け込んだ存在となっています。
プラ・ラーフはなぜ「月を飲み込む」のか
乳海攪拌の図 Wikipediaより
プラ・ラーフの神話は、ヒンドゥー教の有名な神話「乳海攪拌(にゅうかいかくはん / Samudra Manthan)」に由来しています。
乳海攪拌とは、神々と阿修羅(アスラ)たちが協力して“不死の霊薬(アムリタ)”を作り出そうとした壮大な神話です。
神々は、世界の中心にある「マンダラ山」を巨大な棒のように使い、ナーガ(巨大蛇)のヴァースキをロープ代わりにして、宇宙の海「乳海」をかき混ぜました。
この攪拌によって、
- ラクシュミー女神
- 聖なる白象アイラーヴァタ
- 不死の霊薬アムリタ
など、数多くの神聖な存在が誕生したとされています。
しかし、完成したアムリタを巡って神々と阿修羅が争い始めます。
そこで阿修羅の一人だったラーフは、姿を変えて神々の列へ紛れ込み、アムリタを飲もうとしました。
ところが、それに気付いた太陽神スーリヤと月神チャンドラがヴィシュヌ神へ密告します。
ヴィシュヌ神は激怒し、円盤武器「チャクラム」を投げてラーフの首を切断しました。
しかしラーフは、すでにアムリタを口にしていたため完全には死なず、“頭だけの不死の存在”となってしまったのです。
そして、自分を告発した太陽と月を恨み続け、それらを飲み込もうとしますが首から下がないため飲み込めません。 この時一瞬だけラーフの体に太陽や月が入った状態が
- 日食
- 月食
であると信じられています。タイのプラ・ラーフ像が、
- 顔だけ
- 黒い姿
- 丸い玉(月)を飲み込む姿
で表現されることが多いのは、この神話が由来です。
タイや東南アジア各地で見られる「乳海攪拌」
アンコールワットの巨大レリーフ
この乳海攪拌の神話は、タイやカンボジアをはじめ東南アジア全域に広く影響を与えています。
特に有名なのが、カンボジアのアンコール・ワットにある巨大レリーフです。
全長数十メートルにも及ぶ巨大彫刻で、神々と阿修羅がナーガを引っ張りながら乳海を攪拌する様子が描かれています。
「乳海攪拌」は実はスワンナプーム空港でもみれます!
また、タイでもこの神話は非常に人気があり、
- スワンナプーム空港の巨大モニュメント
- ワット・プラケオ周辺装飾
- 王室寺院の壁画
- 占星術系寺院
など様々な場所で乳海攪拌モチーフを見ることができます。
特にバンコクのスワンナプーム空港の出国審査場を出たところにある巨大な「乳海攪拌」オブジェは非常に有名で、空港内のフォトスポットの一つにもなっています。
巨大なナーガを神々と阿修羅たちが引っ張る姿は迫力満点で、“タイ神話世界の入口”のような雰囲気があります。
出国時は一番ブルーな時間。また訪タイできることを願って、この像を目に焼き付けておきましょう。。。
プラ・ラーフに会える寺院
ワット・サマーン・ラッタナーラーム (ピンクガネーシャ)
チャチューンサオ県にある超人気寺院で、巨大なピンクガネーシャ像で有名です。
敷地内には様々なヒンドゥー系神像が並んでおり、巨大なプラ・ラーフ像も存在します。
黒いプラ・ラーフが月を飲み込む迫力ある姿は非常にインパクトがあり、厄除け・運気改善スポットとしても人気です。
寺院全体が“タイの神様テーマパーク”のような独特の雰囲気で、タイ人参拝客だけでなく観光客にも非常に人気があります。
| 場所 | チャチューンサオ県 |
|---|---|
| アクセス | バンコク中心部から車で約1.5〜2時間 |
| 最寄り | バンコクからツアー・Grab・貸切車利用が一般的 |
| 見どころ | 巨大ピンクガネーシャ、プラ・ラーフ、ナーガ像 |
ワット・クンチャン
バンコク・トンブリー側にある古寺で、巨大な黄金仏塔とプラ・ラーフ信仰で知られる寺院です。
ここにあるプラ・ラーフ像は非常に有名で、黒い巨大な顔が月を飲み込む姿はかなり独特の迫力があります。
地元タイ人からの信仰も厚く、
- 厄除け
- 悪運払い
- 運勢改善
- 仕事運
などを願って参拝する人が多く訪れます。
観光地化されすぎていないため、“ローカル寺院らしい空気感”を感じられるのも魅力です。
| 場所 | バンコク・トンブリー地区 |
|---|---|
| アクセス | MRTバーンパイ駅からタクシーで約10分 |
| 最寄り | MRT Blue Line「バーンパイ駅」 |
| 見どころ | 巨大プラ・ラーフ像、黄金仏塔、ローカル寺院の雰囲気 |
フエイクアンのガネーシャ寺院
バンコク・フエイクアン地区にあるヒンドゥー色の強い小規模寺院で、ガネーシャ信仰とともにプラ・ラーフ像でも知られています。
繁華街エリアに近いにもかかわらず、境内はかなりディープな雰囲気で、
- ヒンドゥー神像
- 護符文化
- 占星術信仰
- ラーフ信仰
など、“タイのスピリチュアル文化”を濃く感じられるスポットです。
夜になるとライトや線香の煙も相まって、かなり神秘的な空気になります。
観光寺院というより、実際にタイ人が参拝している“生きた信仰空間”という印象が強い場所です。
| 場所 | バンコク・フエイクアン地区 |
|---|---|
| アクセス | MRTフエイクアン駅の目の前 |
| 最寄り | MRT Blue Line フエイクアン駅 |
| 見どころ | プラ・ラーフ像、ガネーシャ像、護符・占星術文化 |
ガネーシャとプラ・ラーフがセットで見られる理由
タイの寺院では、ガネーシャとプラ・ラーフが同じ場所に祀られていることがよくあります。
日本人からすると少し不思議な組み合わせに見えるかもしれませんが、これはタイ独特の宗教観や“開運文化”と深く関係しています。
タイでは、
- 仏教
- ヒンドゥー教
- 精霊信仰
- 占星術
- 護符文化
などが自然に融合しており、「宗教の違い」よりも“ご利益”が重視される傾向があります。
ガネーシャは「成功」の神
ガネーシャは、タイでは「プラ・ピカネート(พระพิฆเนศ)」と呼ばれ、非常に人気の高い神様です。
ヒンドゥー教では、
- 学問
- 芸術
- 商売繁盛
- 成功
- 障害除去
を司る神として知られています。
特にタイでは、
- 芸能人
- YouTuber
- デザイナー
- 経営者
- クリエイター
などからの信仰が非常に厚く、「成功を呼ぶ神」というイメージが強い存在です。
一方、プラ・ラーフは「厄除け」の神
対してプラ・ラーフは、
- 厄除け
- 悪運払い
- 運勢改善
- 見えない障害の除去
- 占星術
と深く結びついた存在です。
タイでは、人生の転換期や“運気が悪い時期”にラーフへ祈る人も多く、強力な厄除け神として信仰されています。
つまり、
- ガネーシャ = 成功を呼ぶ
- ラーフ = 悪運を取り除く
という役割分担になっているのです。
タイでは「攻守セット」のような感覚
タイでは、
「良い運を呼び込みながら、悪い運も防ぐ」
という考え方が非常に好まれます。
そのため、
- ガネーシャで成功運アップ
- ラーフで悪運カット
という組み合わせは非常に相性が良いと考えられています。
日本でいうと、
- 商売繁盛
- 厄除け
- 開運
- 魔除け
をまとめて祈る感覚に近いかもしれません。
プラ・ラーフ参拝と「曜日」の関係
タイでは「曜日」をかなり大事にする文化があります。
日本だと「今日は金曜日か〜」くらいの感覚ですが、タイでは
- 自分が何曜日生まれか
- 今の運気がどうか
- どの神様と相性が良いか
などを気にする人が結構多いです。
そしてプラ・ラーフは、その中でも特に“水曜日の夜”と関係が深い存在として知られています。
実はタイの水曜日は「昼」と「夜」に分かれている
タイの曜日信仰では、水曜日だけが
- 昼の水曜日
- 夜の水曜日
に分かれています。
その“夜の水曜日”を司るのがプラ・ラーフです。
ラーフは、
- 闇
- 影
- 月食
- 夜
- 運命の変化
などと結びついているため、「夜の星」として扱われているんですね。
タイの寺院でラーフ像が黒かったり、ちょっと妖しい雰囲気なのもこのイメージが由来です。
「最近なんかツイてない…」時にラーフ参拝する人も多い
タイでは、
- 最近運気が悪い
- 仕事がうまくいかない
- 人生の流れを変えたい
- 厄を落としたい
みたいなタイミングで、プラ・ラーフへ参拝する人がかなりいます。
日本でいう「厄払い」に近い感覚かもしれません。
特に“水曜夜生まれ”の人はラーフとの関係が深いと言われることもあり、占い好きなタイ人は結構気にします。
ラーフ参拝は「夜」の雰囲気がかなり独特
ラーフは“夜の神”的なイメージが強いため、夜に参拝する人も多いです。
実際、バンコクのラーフ系寺院へ行くと、
- 線香の煙
- ネオン
- 黒い神像
- 読経
- お供え物
などが混ざって、かなり独特な空気感があります。
いわゆる「普通の観光寺院」とは少し違って、“タイのディープな信仰文化”を感じられる場所が多いです。
ラーフには「黒いもの」を供える
プラ・ラーフには、
- ブラックコーヒー
- コーラ
- 黒豆
- 黒ごま
- 黒いゼリー
など、“黒い食べ物・飲み物”を供える風習があります。
寺院によっては、供物台にコーラや缶コーヒーがズラッと並んでいて、日本人旅行者はかなり驚くかもしれません。
初めて見ると、
「なんで神様にコーラ!?」
となりますが、タイではかなり定番のラーフ供物だったりします。
タイの宗教観らしさを感じる存在
プラ・ラーフ信仰は、タイ独特の宗教観を非常によく表しています。
タイでは「仏教」「ヒンドゥー教」「精霊信仰」「占星術」が明確に分かれているわけではなく、人々の生活の中で自然に混ざり合っています。
そのため、仏教寺院の中にヒンドゥー由来の神像が置かれていることも普通であり、タイ人にとってはごく自然なことなのです。
プラ・ラーフは、そんな“タイらしい信仰文化”を象徴する存在の一つと言えるでしょう。
